「なぜ『REGAME』をやろう、と思ったのか」

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まずは、なぜ『REGAME』を始めようと思ったのか? そこから話をうかがいたいです。
加藤
そもそも、なぜ「REGAME」を思いついたのかというと、やっぱり「リアル脱出ゲーム」があったからです。
リアル脱出ゲームは、「場所の制約」によってできないことが、けっこういっぱいある。それが面白いところでもあるんだけど、「会場の制約なしでやれたらいいな」っていう気持ちもずっとあった。
そこで「デジタルの世界でやってみよう」と思ったんです。
もともとデジタルだった「脱出ゲーム」をアナログに持ち込んで、独自の面白さを生み出した「リアル脱出ゲーム」を、もう一度デジタルに戻してみたくなった。
当初、僕が考えていたことは、ただひとつ。 【時間軸】ということ、つまり「せーの!」で始まる。
制限時間を過ぎると終わってしまう。
誰でも、いつでも、すぐにアクセスできるから素晴らしいとされてきたWEBの世界を、時間固定のイベントとして扱ったら、すごく制約ができ、不親切になってしまうかもしれない。
でも、「不親切さが面白い」んじゃないかと思ったんです。世界中のいろんな地域で、たくさんの人が、その時間を同時に待ち望む……ということが起こると思ったら、ワクワクしたんです。
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木谷さんと洋基さんが、この企画を面白いと思ったポイントはどんなところに
あるんですか?
中村
飲み会で加藤さんと出会い、その話を聞き、すぐに「ぜひ一緒にやりましょう!」と。
PARTYの仕事は、だいたいクライアント企業ありきのBtoB商売が多いです。
そうではなく、「興行」として、無から一緒に作り上げていき、お客さんからお金をもらって伸びていく。
そういうデジタル興行をやるのは、とても楽しそうだなと思ったんです。
木谷
僕はもともと、「SCRAPがいつも面白いから、今回もきっと面白いだろう」というくらいで。
Webなのに、お客さんにお金を払ってもらうというのは面白いと思ったし、普段、お金が取れなくて泣いている僕らからしたら、ホントにすごいなと(笑)。
BtoBベースだと、すごくいいコンテンツを作ったとしても、無料で提供することになるんですよ。
でも、本当は「お金を取ってお客様と向き合った方が、作り手も真摯に取り組めるのに……」と感じることも多くて。
中村
健全ですよね。第1回目は、同時プレイ人数が3,813人だったんですけど、それが10万、100万人と増えていったら、リアルタイムに熱気は広がっていくじゃないですか。
たとえゲームが閉じられた空間でも、SNSを通して、熱気は共有されていく。
それは「リアル脱出ゲーム」でもまだできていないことで。リアルタイムにすごい数の人が集って熱気を発し、楽しんで、それが興行収益にもなる。
それって、すごく健全な、エンタメのありかただと思う。

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ネット上の社会って、基本無料ですよね。
でも、REGAMEは「有料でやる」から話が進んでいった。
Webの人間として、抵抗はなかったんでしょうか。
加藤
ホントに払ってくれるのかなと思ったけど、僕は某ソーシャルゲームに、月に4万円払った経験があるんで(笑)。
冷静に考えると、実は、払う文化になってきているとも思う。
中村
モバイルは、以前から、課金プラットフォームとして注目されていましたよね。
ネットバブルには3段階あって、まず1990年代後半に、ITベンチャーが勃興する、ビットバレーとか呼ばれた頃。
2回目は、iモード公式サイトのとき。月々300円くらいの課金モデルである公式サイトにみんなとびついた。
3つ目は、今。モバゲーやGREEをはじめとするソーシャルゲーム。
実は、そこらへん以外で、新規参入者がネットで大きく儲かるモデルって少ないんですね。
しかし、ソーシャルゲームバブルだから同じことをするのって、なんだかくやしい。
そこで「ゲームというよりオンライン興行をしよう」と加藤さんがはじめに言いだしたのは、すごくいいな、と思ったんです。
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では、そこからこの3者の役割分担はどうなっていったのでしょう。
まず、コンテンツはSCRAPですよね。
木谷
僕らカイブツはアートディレクションの担当ですね。
「REGAMEはどのデザインクオリティでやるか」を、ビジュアル構築しています。
中村
PARTYは、全体統括です。
SCRAPがつくった謎を、どうやってデジタルのコンテンツに落として、上質なコンテンツにするか、を考える係です。
せっかく「リアル脱出ゲーム」をオンラインにするんだから、Webなのにどこかでアナログと繋がっているような感じにしたかった。
サイト全体の設計もしています。
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1回目のキーワードは、「リアルじゃないところを、リアルに落とし込む」ことでしたが、そこは満足していますか。
加藤
でも、実は「そんなにリアルに落とし込まなくてもいいんじゃないか」っていう気持ちが、どんどん強くなっています。
というのも、人々がパソコンの前で、開始時刻を待ち望んでゲームをするんだから、画面の前で起こっていることはすべて「リアル」だろうと。
単純に、「同時にプレイする」ことで体感できる。
だから「『リアル脱出ゲームオンライン』という言葉には矛盾がない」と思ったんです。
リアル感を出そうとして、電話とかチャットとか、いろんなギミックを用意したんだけど、「世界中で同時にやるんだ」というアイデアのなかにこそ、すでに「リアル」が含まれていることがわかり、だんだんと「リアル」という言葉の定義にこだわり過ぎないようになっていきました。
中村
そうですね。でもぼくは、むしろ「リアル」に拘泥する役を演じています。
「リアル脱出ゲーム」は、なぜあんなに面白いのか?「リアル」って何なのか?を分解すること。
ひとつの理由は、リアルタイムにみんなで集まってやる熱気に、なにかしらの魔力があるから。
たとえば、面白い演劇をビデオに撮って、あとから見返してもそんなに面白くないのと一緒で。
「リアルタイム」をはじめとして、まだ「リアル」は模索しようがあると思ったんです。
「リアル」に関係しそうなデジタルの仕掛けがあれば、どんどん試したいし、提案していきたい、と思っています。
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木谷さんは、「リアル」という観点についてはどうお考えでしょう。
木谷
僕らは「リアル」にこだわっているわけじゃなくて。
やっぱりWebとはいえ脱出ゲームなので、どうビジュアルで差別化をはかるか、
が重要でした。
そして、体験時間をどこまで濃密なものにできるか。
どこまでリッチかつ軽いものにできるか。
そこで、CGではなく、ミニチュアをつくり、すべてリアルな謎を配置しました。
「リアル」にしたのは結果論です。
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いま「ドラクエX」など、リアルと強い結びつきをもったコミュニケーションゲームに
なっています。
みなさんがやっているものは、まったく違う?なにかしら、リンクしているんでしょうか。
加藤
「オンラインゲーム」というジャンルには入るから、その亜流っていう位置づけにはなる。
ただ、僕らは「制限時間を設ける」というリスクを取った。
「不自由にすることで、エンターテイメントの幅が広がる」というのは「リアル脱出ゲーム」をやってみてわかったことで。
その手法を、デジタルでもう一度やってみよう、というのが今回の試み。
「オンラインゲーム」というのはあくまでも土台で、「そこに制限時間を設けた」というのが重要なんです。
ゲーム体験が1時間なら、その1時間のためだけに、世界観、設定、ビジュアル、謎、サーバー……すべてが集約しているものを作ろうとしたのは、いまのところ我々しかいないだろうと。
なぜなら、僕らはまずイベントの構想があって、そこにはちゃんとお客さんがいるから。
そういう読みの下で『REGAME』は成立しているんです。

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この『REGAME』のアイデアを思いつくにあたって、「リアル脱出ゲーム」以外の文脈で
なにか影響を受けたものはありますか?
加藤
僕らは、いろんな会社から「ゲームをつくろう」というお話をいただくんですけど、なんか乗り切れないところがあって。
……というのは、僕は「テレビゲームの次」がやりたいから。
小説や映画や舞台は一方通行だけど、僕らは主人公に感情移入することで、楽しめる。
「ドラゴンクエスト」以降は、主人公を操ることができるようにあった。じゃあその次は?
自分が主人公になって自分の身体でやるゲームを作ろうと思ったんです。
ゲーム会社さんから「一緒にゲームを作ろう」と言われた時に、自分自身が主人公になること以上の素敵な体験が、思いつかなかった。
ここ2年ほどずっと考えていったなかで、これなら僕らがつくる意味がある、と思えたのが『REGAME』だったんです。
中村
第1回は、アーカイブ(リンク:http://regame.jp/games/)を全公開していますが、次作からは、アーカイブはありません。
その場、リアルタイムの公演に最適化したコンテンツを開発するし、参加してくれた人に最高の体験をあげるように特化します。